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小さな町の壁画アーティストがニュージーランドの壁画アーティストになる日

りうか
りうか
こんにちは。部屋の大掃除をしていたらカオスがいつまで経っても無くならないりうかです。

まずは、昨年の8月に公開された、こちらの記事を覚えていらっしゃる方はいますでしょうか。

南島の小さな町が壁画で生まれ変わる日 - ジェラルディンの壁画アーティスト南島の小さな町、ジェラルディンをご存知ですか。 クライストチャーチとテカポの間で休憩地点として使われることの多い町です。そこにワーキングホリデーでやってきた日本人青年が、町に壁画を描き始めました。いまや、町の名物にもなっています。 この記事ではそのジェラルディンの壁画たちと、作者である江龍さんのご紹介をしています。...

ニュージーランドがcovid-19のロックダウンから明けてしばらく経ったころ、Twitterで見かけた壁画に心を撃ち抜かれて作者の江龍さんに会いに行った時のインタビュー記事です。

その時には既にジェラルディンのあちこちに江龍さんの壁画が描かれており、その年の11月にはジェラルディンフェスティバルがあるので、それを目指してカウンシルから依頼された大きな壁画を描くことになっているんだと話してくれたのを今でも覚えています。

あれから10ヶ月。
江龍さんはジェラルディンをベースにしながらも、そこから旅立ち、南島の各地を回りながらさまざまな場所に壁画を描いてきました。
今や、押しも押されもせぬニュージーランドの壁画アーティストとなったと言っても過言ではないでしょう。

今回は、あの頃からずっと江龍さんのファンを自認している私ことりうかが、江龍さんのニュージーランド壁画完全攻略のための記事を書くことにしました。
2020年の記事は、あの時の江龍さんの羽ばたいていく瞬間を切り取ったものとして、内容はその時点で止めておくことにしました。
ということで、ジェラルディンの壁画についても完全版はこちらでご覧いただけます。

ジェラルディンからの旅立ち

江龍さんをジェラルディンから旅立たせたものは何だったのでしょうか。

江龍
江龍
ブラフでミューラルフェス(壁画フェスティバル)を開催している主催者から声が掛かったことが、一番大きいですね。

聞いてみると即答でこんな答えが返ってきました。

今までも、ジェラルディン以外からの依頼はいくつもあったけれど、タイミングも合わなかったし移動手段(車)もないし…ということで保留もしくはお流れになっていたとのこと。

ところが2020年11月にブラフのミューラルフェスティバルを主催している方から、直々に声をかけてもらったのだそう。
私は寡聞にして知らなかったのですが、ミューラルフェスティバルというのは基本的に 主催者からの招待がないと参加出来ない ものなのだそうです。

そんな中で、ニュージーランドのトップアーティストたちが集まるこのフェスティバルに招待されたのは江龍さんにとっても大きな出来事でした。

彼らと一緒にフェスティバルに参加できることへの喜びはもちろん、自分のキャリアとしても見逃す手はない!ということで、「よし、車を買って参加しよう!」となったのだそうです。

その時にタイミングが合う依頼やイベントなどをこなしていくうちに、ニュージーランド南島の南には江龍さんの壁画が次々に誕生することになりました。

あれからの軌跡

ジェラルディン

私が見学ツアーをしてもらった日からも、江龍さんの壁画はジェラルディンで着々と数を増やしています。

今後も増えていったら都度追加していきたいので、簡単にご紹介していきますね。

Paradise Shelduck on the hill

ヨガスタジオ兼個人宅の外壁にかかれたパラダイスダックです。
美しいフォルムとカラフルな色遣いと共に、実はちょっと怖そうな眼差しのダックから目が離せません。

DREAM

簡単にご紹介…とは言いましたが、こちらはそれだけで済ませるわけにはいきません。
前記事でティマルカウンシルからの公式な依頼でこのプロジェクトが決定したことまではお伝えしていましたが、それが見事に結実しました!

大きすぎてなかなか全体が見られないのですが、是非さまざまな角度からご覧ください。

そして、江龍さんの名前を刻んだプレートも公式に設置されました。

江龍さん自身、この壁画がニュージーランドでの壁画作品の中でも、そして自身の壁画アーティストのキャリアの中でも、大きな節目となることは間違いないと話してくれました。

Sound of Tropical

自宅でアート教室などを開催しているご夫婦の自宅ガレージの作品です。
また、旦那さまは江龍さんを地元のメディアで何度も取り上げてくれた記者でもあります。

このガレージの別の壁面には、2020年ジェラルディンフェスティバルのライブペイントで描かれた Old aviator の絵もあります。

The Community

理学療法院(フィジオセラピー)の建物内に描かれたファンテイルたちの絵です。
色味を絞ったやわらかな色彩の中に、タイトルの通りファンテイルたちの優しいコミュニティが描かれていますね。理学療法に通うのも楽しくなりそうです。

Andorra Motel

モーテルのレセプション横の外壁に描かれたものです。
ニュージーランドらしいモチーフがいくつも色彩豊かに取り入れられていながらも、すごくまとまっていて、アコモデーションから歓迎されている感じがすごくします。

In to the Nature

ジェラルディンでの最新の壁画は何とDOC(ニュージーランド自然保護省)からの依頼。はっしーさんが記事でご紹介しているピールフォレストの入口にあるトイレです。

これは美しい…トイレがこんなに綺麗だときっと綺麗に使おうと思う人も増えるはず。いろんなところにこういうトイレが増えたらいいですよね。

「ピールフォレスト」で樹齢1000年の大木に出会おう【ニュージーランドマイナー名所巡り】ハイキングやトレッキングコースが充実しているニュージーランド。この記事では、長短さまざまなコースが一箇所で楽しめる場所を紹介します!...

ジェラルディン以外(南島)

Ramen Tekapo

星空と美しい湖で有名なテカポにあるレストラン、ラーメンテカポの外壁に描かれたものです。日本人とタイ人のシェフがいてどちらも本格的な味が楽しめるのが、壁を見ていても伝わってくる気がします。

Bring the History to the Future

DREAMに続いて、江龍さんのもう一つの大きな足跡といえばこの壁画になるでしょう。
これこそが江龍さんを旅にいざなったブラフのミューラルフェスティバル”SOUTH SEA SPRAY”で描かれた壁画です。

当時のまだ壁画が完成する前の記事を こちら からどうぞ。江龍さんのインタビュー動画も見られますよ。
また、この壁画はフェスティバルで一般の方々が選ぶ人気投票で見事にNo.1に選ばれました!

この映像を見ると、壁画の大きさだけでなく町との対比も見られてさらにすごさが伝わってきました。

またブラフ滞在中にこんな可愛らしい作品も描いたそうです。

精肉工場の廃墟にアーティストたちみんなで描いた作品のうちのひとつとのことですが、今はもう立ち入り禁止になって見られない可能性が高いそうです…。

GORE STREET ALIVE

ブラフに続いて参加したゴアのミューラルフェスティバルでの参加作品です。
大胆な色遣いが目を引き付けますよね!

多くのアーティストがブラフから続けて参加したそうです。

SAINT KEA

ダニーデンの個人のお宅(元は教会だったそうです)の壁に描かれた大きなキア。
夜になるとステンドグラスに明かりが灯ってさらに美しいようです。

写実的だけれどすごく幻想的で美しく、個人的にはいつか絶対見に行くと決めているお気に入りのひとつです。

Graffiti Battle

ちょっと寄り道。こちらは壁画ではないのですが、ダニーデンで行われたグラフィティバトルに江龍さんが飛び入り参加した時の絵です。

飛び入りだったのでトーナメントには参加できなかったそうなのですが、他のグラフィティたちとは一線を画したこの絵は一瞬で買い手が決まったとのことです。さすがですよね~。

Pink Panther Collab with deow.1

こちらもダニーデンでの壁画。ブラフのフェスティバル”SOUTH SEA SPRAY”の主催者、deow.1とのコラボ作品です。

やはりコラボだけあっていつもの雰囲気とは少し異なりますが、また違った迫力や魅力がありますね。

江龍さんの部分のアップはこちらです。

Ashburton Welcome Mural

これは、次に江龍さんが取り掛かる作品です。
アッシュバートンの歓迎の壁画になる予定。コンペの最終決戦がFacebookで告知、テキストでの投票が行われて、605票中493票という圧倒的得票で勝利しました。

そして実はここで競っていたもう一方のアーティスト、ジョニーは、ダニーデンのグラフィティバトルの主催者だったそうなのです。

ニュージーランドは狭い世界ですが、さらに壁画アーティストの環となると、すごく近い関係性がありそうですね。

人気アーティストとなった今

今回の記事を書くにあたって、江龍さんにはいろいろと聞きたいことがありました。

中でも気になっていたのが、ここまで信頼と人気を得た江龍さんのもとには依頼が引きも切らないであろうこと。そんな中で江龍さんが取り掛かる仕事はいったいどうやって決めているのか…ということでした。

まず質問して最初に返ってきたのは

江龍
江龍
ワクワクするかどうかですね。

との答え。さらに突っ込んで聞くと

江龍
江龍
やはり描いたものがポートフォリオになっていくので、あまりにも自分の作品にならなそうだったり、その壁に描く意味とか意義を感じなかったら、見送ってることが多いかもです。
それらの基準は予算以上に大切にしてるけど、もちろん予算が合わなくて話が流れることもあります。

と聞かせてくれました。やはりアーティストの魂に触れるかどうかは重要なんですね。
ただやはり待たせてしまうことも多いそうで、特に個人案件はまったく追いつけていないのだとか。

江龍
江龍
実は自分から断ることは意外と稀で、先方からやっぱいいやってなったり、途中で条件変わったりして流れてしまうことのが圧倒的に多いですかね。

とも。裏話として、先日もクライストチャーチでコンセプトまで決まっていた案件があったそうなのですが、大雨でその建物が浸水して、建物の借用を解約することになってしまったので仕事が丸ごとなくなってしまったんです、と教えてくれました。そんなこともあるんですね…。

江龍さんの壁画一覧決定版

それではここで、江龍さんがニュージーランドで描いてきた壁画の一覧をご紹介するとともに、現在私たちが見ることが出来る壁画をマップでご紹介します。

作成壁画リスト:作成日時順

2020年

  • Sacred Kingfisher
    2020年1月29日
    北島:パーマストンノース Te Marae o Hine | The Square
  • CONNECT
    2020年3月25日
    南島:クライストチャーチ コールセンター(非公開)
  • Ephemeral Life
    2020年4月29日
    南島:ジェラルディン ジェラルディンモーテル
  • Breath of Unicorn
    2020年5月13日
    南島:ジェラルディン 個人宅外壁(非公開)
  • The Running Duck
    2020年5月28日
    南島:ジェラルディン カフェ外壁
  • The Hair Boutique in Geraldine
    2020年6月15日
    南島:ジェラルディン 美容室内壁
  • Mundell’s Cafe & Restaurant
    2020年6月27日
    南島:ジェラルディン カフェエントランス
  • The future
    2020年7月18日
    南島:ジェラルディン レストラン内壁
  • Hobbiton house
    2020年7月25日
    南島:ジェラルディン 個人宅ガレージ(非公開)
  • Paradise Shelduck on the hill
    2020年8月12日
    南島:ジェラルディン ヨガスタジオ兼個人宅(非公開)
  • DREAM
    2020年10月16日
    南島:ジェラルディン プール外壁
  • Sound of Tropical
    2020年11月3日
    南島:ジェラルディン アート教室兼個人宅ガレージ
  • Old aviator
    2020年11月14日
    南島:ジェラルディン ライブペインティングのちSound of Tropicalと同じ家へ
  • The Community
    2020年11月23日
    南島:ジェラルディン 理学療法院内壁
  • Ramen Tekapo
    2020年12月10日
    南島:ジェラルディン レストラン外壁

2021年

  • Andorra Motel
    2021年1月8日
    南島:ジェラルディン アコモデーション外壁(レセプション横)
  • Bring the History to the Future
    2021年2月23日
    南島:ブラフ 個人宅外壁(フェスティバル参加作品)
  • GORE STREET ALIVE
    2021年2月27日
    南島:ゴア 店舗外壁(フェスティバル参加作品)
  • SAINT KEA
    2021年3月16日
    南島:ダニーデン 個人宅外壁
  • Pink Panther Collab with deow.1
    2021年3月25日
    南島:ダニーデン CBD(非公開)
  • In to the Nature
    2021年4月23日
    南島:ジェラルディン ピールフォレストトイレ(DOC)
  • Ashburton Welcome Mural
    Coming Soon…
    南島:アッシュバートン予定

壁画マップ:ジェラルディン

壁画マップ:北島

壁画マップ:南島(ジェラルディン以外)

これからも応援し続けます!

まだまだ依頼も意欲も途切れない彼の作品はこれからもどんどんと増え、また彼の作品を愛する人たちも増えると思います。

ジェラルディンや他の壁画がある町に行かれた方は、是非見に立ち寄ってみてください!
江龍さんマニアはチェックリストを作ってすべて回ってみてるのも楽しいと思いますよ。

作品は随時、Instagram にアップされますので、是非そちらもご覧ください。
※現在Instagramプロフィールの埋め込みが上手くできないので、リンクでお許しください…。

Jandals Lifeでも、これからも随時情報を更新していく予定です。
どんなに彼が有名アーティストになったとしても、Jandals Lifeはずっと江龍さんを応援しています!

ABOUT ME
りうか
南島、ネルソンの隣のタスマン地方に住んでいます。2002年にニュージーランドに出会い紆余曲折の末、2017年に移住。永住権保持。元留学エージェント。ニュージーランド公認の運転教習と旅客輸送の資格を保持し、車旅サービスのmākohaというサービスを始めました。 料理が好きで、好きなものを好きな時に食べるためにいろいろ自分で仕込めるようになってきました。