ニュージーランドの移民に対する暗い歴史の続きです。
前回はドーンレイドの意味と事の発端について書きました。
今回は実際に何が行われていたのかから始めましょう。
ドーンレイドの実態
70年代に起こった2回の経済危機を経て、ニュージーランドの経済は窮地に立たされました。失業者数も増え、人口の増加から住宅不足にも陥ります。
結果として、問題視されたのが移民の増加でした。
その流れから移民局と警察は当時増加傾向にあった「不法滞在者」を厳しく取り締まるようになります。「不法滞在者」と認識され処罰の対象となったのが多くのアイランダー達です。
70年代、80年代の統計では、大部分の不法滞在者はヨーロッパや北アメリカの人達だったが、彼らはアイランダー達のようには対象とならなかった。
– マッセイ大学 ポール・スプーンリー教授
実際にはアイランダー達の不法滞在者率は他国の不法滞在者率に比べると低かったようですが(30%程度と言われているようです)、検挙された不法滞在者率の86%はアイランダーでした。
ドキュメンタリーで話をしてくれているファイマイ(Faimai)さんは、早朝警察にドアをノックされました。家族に不法滞在者がいることを知っていた彼女は説明を試みますが、有無を言わさずに家族は連れていかれます。
現在の様に猶予期間や釈明の余地はなく連れていかれた家族はそのまま強制国外退去となりました。
検挙は家だけではなく職場や町のバーなど至る所で行われ、アイランダーがターゲットとなる日々が続きます。
1968年の移民法の改定により、労働ビザの期限を過ぎた者の強制国外退去が可能となり、警察にはパスポートだけではなく、ビザの提示要求に加えてその他の身分証明書の提示を要求する権限が与えられます。
彼らにとって、警察は治安を維持する為の組織でなく「白人の権利を守る為」の組織となっていました。
1974年にはオークランドのオネハンガでは午前3時にトンガ人に対しての一斉検挙が行われています。この逮捕劇に対し「イングランドから移民を入れ続けているにもかかわらず、なぜトンガ人がターゲットとなり強制国外退去の対象とならなくてはいけないのか。なぜポリネシア系の人達だけが3ヶ月の滞在のみしか認められず国に帰らなければならないのか。」との反論が残っています。
ドーンレイドに対する声
1975年に国民党が勝ち政権を得た後、パシフィック諸島のコミュニティへの「襲撃」が相次ぎます。
ロバート・マルドゥーンの指揮の下、選挙期間にはパシフィックコミュニティに対してのプロパガンダが行われ、更に移民の数を3万人から5千人まで減らすという政策を掲げることで、移民の恐怖をあおったことを理由に非難されています。
主要なメディアがアイランダー達に対するネガティブなステレオタイプを拡げた結果、1976年頃にはドーンレイドをサポートする声が増えていきます。
それでもわずかなグループから反対の声も上がります。
台頭となったのはポリネシアンパンサーズ党や教会のスポークスマン、反差別団体です。
ちなみに、ポリネシアンパンサーズ党はアメリカのブラックパンサー党に触発され1971年に結党されました。ブラックパンサーは(2Pacのお母さんのアフェニ・シャクールもメンバーだったね)過激だったことで知られているね。
ポリネシアンパンサーズ党のデモや活躍により反対の声は少しずつ大きくなっていきます。
その結果、1979年にバート・マルドゥーンはドーンレイドの廃止を発表します。
更にそれから42年経った今、パシフィックピープル大臣のウィリアム・シオが「We were dawn raided.(私達はドーンレイドされた。)」と話し、アーダーン首相が正式に謝罪をすると発表しました。
現在の移民への対応
2021年現在、残念ながらニュージーランド国内の移民に対する対応は厳しくなる一方です。
コロナが始まり高騰が収まると思われた住宅事情は、帰国者の増加により更なる高騰へと繋がりました(と個人的には思っている)が、それでも移民に矛先が向いています。
失業率の(少しの)増加も移民が職を奪っているという認識が政府にはあったように思えます。
十分な人材がいると認識されているオーバーサプライリストに掲載されている職業の分野ですら人材を揃えられなくて(一時的でも)閉店しています。
このことからも移民局(政府)の意向と現実の大きなギャップが見受けられるし、ワークビザやレジデンスビザ(俗にいう永住権)の収入規定額が上がることも向かい風となっています。
今までの時給25.50ドルですら、ポジションによっては「時給設定が高過ぎるんじゃないか」とビザ申請の審査時に移民局から突っ込まれることがあったのに、27ドルにしてどう対応するのかも気になります。
実際には高すぎるからダメという規定はないので、雇用主が雇用者のスキルや経験、それ以外の知識に対して対価を支払うことには一切問題はないんだけど。
Anyways、今回は前回に続いてのドーンレイドについての説明でした。
もう少し差別について掘り下げてみたいところだけど、それはまた別の機会に。
因みに大学の授業は順調に進んでいますー!
250ページくらいのスライドも作って、たくさんのケーススタディも入れて、参加してくれている方達の知識や疑問に合わせて授業中にもアプローチを変えるので頭が沸騰しています。
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参考文献
The dawn raids: causes, impacts and legacy