面白い

ニュージーランドの固い豆腐をおいしく食べたかった

日本人の食卓には欠かせない食材、豆腐。
高タンパクで低カロリーであることから健康志向の人々の支持を受け、いまや英語でも「TOFU」で通じるほどグローバルな食材と化している。

ここニュージーランドも例外ではなく、特にベジタリアンの人に豆腐は大人気。
どんなスーパーでも簡単に手に入る。

いろんな種類の豆腐が売ってる。

で、ニュージーランドに住み始めてからずっと気になっていた豆腐があった。
それがこれ。

ニュージーランドの象徴・シダが描かれたデザイン。

「NZ Tofu」という実に誇らしげなネーミング。
日本のメーカーはいくらなんでも「日本豆腐」なんて商品名はつけないだろう。
過剰なまでにニュージーランド産にプライドがあるのがお国柄でもある。

製造元のSoyWorksという会社について調べてみると、モトゥエカという人口8000人ほどの町で大豆加工業を営むメーカーだそう。
1983年から豆腐を作っているというから、国としての歴史の浅いニュージーランドでは立派な老舗だ。

で、なぜこの豆腐がそんなに気になるのか。
理由は商品名の下に書かれたこの部分である。

firm – extra firm とある。
つまり「すごい固い」という意味だ。
確かに手にとってみると、大きさの割に重さがあり、ずいぶんみっしりしてるんだろうなという感じがする。

ニュージーランドの固い豆腐、どんな味がするのだろうか。
いろんな方法で食べてみよう。

さっそく現れる不安

どっしり。

さて、とりあえずまな板の上に出してみたところ「どすっ」という音が聞こえた。
これはあれだぞ、豚バラのブロック肉とかを置いたときにする音だぞ。

この豆腐のタンパク質密度、ひょっとしてその辺の肉と同じなんじゃないのか。
確かに側面のみっちり具合は見たことないレベルだ。

自分の知っている豆腐と同じ扱いでおいしく食べられるのだろうか。
まだまな板に出しただけなのに、不安しかない。

冷奴で撃沈

豆腐を食べるなら、まずは素材の味そのままでしょ。
ということで冷奴にしてみた。

薬味はきざみネギとおろしショウガ。
日系スーパーで買ってきた美味しい醤油をかけて準備は万端だ。
さてお味はどうか。

こりゃダメだ。

思わず目が半開きになるほど完敗である。

そもそも、食感が日本人の想像する豆腐とはまったく違う。
水分量が極端に少なく、豆腐というより「おからを押し固めたもの」と表現したほうがしっくりくる。
冷奴なのに、食べていくうちに口の中がパッサパサに乾いていくのがわかる。

箸をいれるとボロボロ崩れる。

あまりに密度が高いので、醤油とのなじみも悪い。
素材をそのまま味わう食べ方には向いていないようだ。

湯豆腐も試してみましたが、似たような結果に終わりました。

濃い味付けで食べるのが正解なのか

冷奴と湯豆腐が否定されたくらいで負けるものか、こちらにはまだ弾が残っている。

ほかに日本人に大人気の豆腐料理といえば麻婆豆腐だろう。
味噌ベースの辛い味つけならたいていのものはおいしく食べられるはずだ。

というわけで作った

麻婆豆腐の素で分量通りに作ったはずなのだが、なんだろう、見た目がどうしても我々の知っている麻婆豆腐とはだいぶ違う。
豆腐があまりに丈夫なため、フライパンで炒めているときにまったく崩れないんである。

どうにも味がちゃんと染みているようには思えないが、とはいえ麻婆豆腐には違いない。
さすがに冷奴や湯豆腐よりはおいしいはずだ。

服が違うのは日を改めたからです。

うーむ、まぁ食えるっちゃ食える。
しかし「うまい!」と言えるレベルではない。
あくまで素材そのまま食べるよりはマシといった程度だ。

市販の麻婆豆腐の素は、ふつうに日本で売っている豆腐を想定して作られているだろう。
調理過程でいい具合に崩れるくらいにやわらかく、ソースと炒めていくうちに味がからんでいく。

ところがニュージーランド豆腐、いかんせん固すぎてフライパンの中でごろんごろんと転がるばかりで、まったく味がなじまない。
表面だけ一瞬麻婆豆腐で、あとは冷奴とおなじく素材そのまま味わうモードに逆戻りである。

とはいえ、なんとなく美味しく食べる道は見えた。
濃い味付けの方針でいけばなんとかなるだろう。

正解が見えた、ような気がした

そもそも素材のテクスチャが日本の豆腐と異なるのに、同じような調理法を試したのが間違いだった。
ニュージーランド豆腐は、豆腐というよりもタンパク質の塊、肉みたいなもんだと思ったほうがいい。

豆腐ではなく肉だと思うこと。
なるべく濃い味付けで料理すること。

となれば、正解はひとつでしょ。

これだろ。

というわけでカレーにぶちこんでみた。
野菜は玉ねぎのほか、夏らしくパプリカとズッキーニを投入。

角切りにした豆腐はインドカレーに入ってるカッテージチーズっぽくも見え、見た目にあまり違和感はない。
さてお味の方はどうだろうか。

さらに日を改めたので、服が変わってヒゲが伸びてます

う〜〜〜〜む。
これまで試した料理の中では一番食える味だが、「これだ!」という納得感は薄い。

食感はお肉に近いものの、脂が含まれていないので、肉ほどの旨味や満足感がないのが原因か。
「たまにはこれでもいい」って感じではなく、完全にお肉の下位互換である。

しかしカレーが正解だろと自信を持っていたが、よくよく考えてみるとたいていの食材はカレー味にすれば食えるだろう。
子供の嫌いなニンジンやピーマンも、細かく刻んでカレーに混ぜればみんな喜んで食べるじゃないか。

ニュージーランド豆腐のおいしい食べ方を発見したのではなく、どんな食材でもそれなりになる最大公約数的調理法を実践しただけだったのだ。
ついに見えたかと思われた正解だったが、手を伸ばした瞬間、蜃気楼のように消えていった。

今回の豆腐を巡る冒険は、購入予算とモチベーションが底をついたことによって終わらざるを得なくなった。
「うちではこうして食べている」という知恵をお持ちの読者諸氏がいらっしゃれば、ぜひ編集部までご一報いただきたい、と大変勝手なお願いをした上で筆を置くこととする。

ふつうに冷奴にして食べるなら、スーパーで売ってるこの豆腐がおすすめ。日本でも通用するおいしい木綿豆腐です
ABOUT ME
はっしー
日本のIT企業で月100時間超えの残業を経験、過労死しかけた元社畜の34歳。理想のワークライフバランスを求めてニュージーランドの大学へ留学、プログラマとして現地就職。毎日定時帰宅の生活をエンジョイした後、永住権を取得。現在は無職です。