今回は、ニュージーランドの最大都市オークランドの観光名所「オークランド戦争記念博物館」を紹介します!
「戦争記念」という名前ですが、実際は戦争に限らずあらゆる展示品を紹介している総合博物館なのです。
市内からのアクセスも良く、ボリュームたっぷりの内容で丸一日楽しめます。
しかも日本でも見られない特別なゼロ戦が展示されているとあれば、博物館好きにはたまらないのではないでしょうか!?
では、さっそく解説に入っていきましょう!
丘の上に立つ重厚な建物
オークランド戦争記念博物館、まず外観がかっこいいんですよ! 新古典主義建築に基づく、荘厳で重厚な雰囲気がたまらないですね。
開館は1929年。あと10年もしないうちに100周年を迎えるという、歴史ある博物館なのです。
2007年の映画「テラビシアにかける橋」の冒頭シーンのロケが行われた場所でもあるので、映画ファンには見覚えあるかも?
建物の正面には、戦争博物館らしく「THE GLORIOUS DEAD (栄光ある死)」と彫られたオベリスクが。
丘の上にある「オークランド・ドメイン」という公園の中に位置しており、反対側には海をのぞむことができます。
1階: Pacific People ー 太平洋の人々
エントランスをくぐるとまず正面にあるのが、マオリの集会場「マラエ」です。
ニュージーランドの先住民マオリ族を含むポリネシア文化では極めて神聖な場所とされており、内部には先祖の霊をあらわした彫刻があしらわれています。
神聖な場所なだけに土足禁止、写真撮影も禁止です。中がどうなっているかはぜひ皆さんの目で確かめてみてくださいね。
巨大なマオリのカヌーや、木彫りの像なども多数展示されています。さすがオークランドの博物館だけあって圧巻のボリューム。
1階の展示品はニュージーランドのマオリ文化だけにとどまらず、クック諸島やニウエなど、他の太平洋地域に関するものも網羅されています。写真に大きく写っているのはフィジーのカヌーです。
太平洋諸島の国々は日本人からは区別がつきにくいですが、こうしてまとめて展示してくれると違いがわかりやすいですね。
いかにも粗末にすると呪われそうな、ニューギニアの人形なんかもあります。水木しげるの漫画を思い出すテイスト。
ディズニー映画「モアナと伝説の海」に出てくるキャラクター、マウイの人形もありました。
2階: Natural History ー 自然の歴史
火山国・ニュージーランド
あまりイメージがないかもしれませんが、ニュージーランドはれっきとした「火山の国」です。
ロトルアなどの温泉地があるのが何よりの証拠ですし、火山島であるホワイト島が噴火して犠牲者が出たニュースを覚えている方もいるのではないでしょうか。
実はオークランドそのものも、「オークランド火山帯」のど真ん中に位置する街なのです。いつ起きるかわからない火山災害について啓蒙する意味でも、かなりのスペースで火山について説明されています。
こちらの展示スペースで是非体験してほしいのが、この火山災害シミュレーター。
中に入ると、民家のリビングが再現されています。
窓の外にはのどかな海の風景が広がっていますが、テレビのニュースからは「”オークランドで火山が噴火するのではないか”との噂が広がり、街から人が逃げ出している」との情報が流れている。このあと何が起きるのか……?
続きはみなさんご自身で体感してみてください。けっこう怖いです。
古代の美術品に陶磁器コレクションも!
緊迫した災害の展示のあとは、きれいな美術品を眺めてクールダウンしましょう。
ギリシャやエジプトをはじめとする古代の美術品の数々に……
こちらは日本人作家による陶磁器のコレクション!
こんな鮮やかな青の作品も展示されています。
子供も楽しめる生き物の展示
恐竜の骨格模型など、生き物に関する展示室ももちろんあります! 天井から吊り下げられている翼竜の模型は迫力がありますね。
こちらは体長3メートルに達する巨大な鳥「モア」の復元模型。これはもはや恐竜ですね……。最初に発見した人は相当怖かったんじゃないでしょうか。
3階: Scars on the Heart ー 心の傷跡
いよいよ最上階。3階はそのすべてが戦争に関する展示フロアとなっています。
建国以来、ニュージーランドは何度となく戦争を経験してきました。外国から国土が攻撃されたことはないにせよ、多くの国民が兵士として戦場に赴き、命を散らしてきた歴史があるのです。
「Scars on the Heart(心の傷跡)」とつけられたフロア名の意味も考えながら、展示品を見てみましょう。
第一次世界大戦〜第二次世界大戦
第一次世界大戦は日本にとっては馴染みの薄い戦争ですが、ニュージーランドの歴史にとっては非常に重要です。
オーストラリアと連合軍を組んで戦った「ガリポリの戦い」などは、国民の祝日「アンザックデー」として今でも語られ続けています。
第二次世界大戦についても、第一次世界大戦と同じくらい詳しく展示してくれています。これはニュージーランドのほかの博物館と比べてかなりユニークな点です。
ニュージーランドに限らず、アメリカやドイツ、イギリスなど、他の国についての展示も充実していました。写真に写っているのは当時のアメリカ兵の制服と女性のドレス。
日本に関する詳しい展示もあって驚き。こちらは日本兵が戦場に持ち込んだ寄せ書きや千人針、お守りなどです。日本語で説明書きしてくれているのにも敬意を感じます。
マオリ戦争
かつてニュージーランドにも内戦がありました。入植してきたヨーロッパ人(マオリ語で「パケハ」と呼ばれる)と先住民のマオリ族の間で対立が激化し、武力衝突へと発展した「マオリ戦争」です。
今でこそ仲良くやっているように見えるマオリとパケハですが、過去にはこうした負の歴史があったんですね。
この展示スペースでは、当時の基地の再現模型や、マオリとパケハ双方の立場について詳しく解説してくれています。
実物のスピットファイアとゼロ戦が見られる!
オークランド戦争記念博物館で一番の目玉とも言えるのが、第二次世界大戦で活躍した2種類の戦闘機の実物展示です。
まずは「スピットファイア」。当時のイギリスを代表する戦闘機で、ドイツ軍に対するイギリス本土防衛戦で大きな働きを見せました。
2017年の映画「ダンケルク」でも登場していたので、見覚えのある方がいるかもしれませんね。
そしてもう一つは、日本の「ゼロ戦」! 終戦当時、太平洋のソロモン諸島にほぼ無傷の状態で保存されていたものをニュージーランド軍が譲り受けたものだそうです。
しかもこの機体はゼロ戦の中でも「22型」と呼ばれるモデルで、調べたところ、日本国内の博物館で常設展示しているところはない模様(2020年11月現在)。日本にもないゼロ戦を間近で見る貴重な機会なのでお見逃しなく!
個人的には、ゼロ戦の展示スペースに飾ってあった、旧日本陸軍が作成したニュージーランドの地図に心躍りましたね〜。
ニュージーランド各地の地名がカタカナで書かれているのが新鮮。現代とは書き方が違う地名がちらほらあるのも面白く、ずっと見ていたくなりました。
戦没者の名が刻まれた「ホール・オブ・メモリアル」
展示物を楽しんだ最後は、戦地で命を落とした兵士たちに思いを馳せてみてください。
第一次世界大戦から第二次世界大戦、そして現代に至るまで、戦没者たちの名前が壁一面に刻まれています。
フロアの片隅には、ひとつだけ空白になっているパネルがあります。その下には……
「LET THESE PANELS NEVER BE FILLED (この壁に名が刻まれることなかれ)」。
この博物館の展示内容は、すべてこの一言につながっているのではないかと感じました。
料金・アクセス・開館時間
オークランド戦争記念博物館は、ニュージーランドに住んでいる人であれば無料で入場できます! 運転免許証などの身分がわかるものを、受付で提出してくださいね。
海外からの観光客の方は、以下の通り入場料がかかります。
- おとな(14歳以上): NZD28
- こども(5歳〜13歳): NZD14
- 4歳以下: 無料
- ファミリー料金(おとな2名 + こども2名): NZD70
開館時間: 午前10時〜午後5時
公共交通機関を使う場合、電車ならGrafton駅から徒歩10分、Newmarket駅から徒歩15分です。バスの場合は、781号線が博物館まで直接乗り入れています。
その他、自家用車を使う場合などのアクセス情報は公式Webサイトをご参照ください。